2008.5.2  

 お昼に次の本が届きました。たぶん、アマゾンのマーケットプレイスから。
Wilfred Vermon Farrar,
Chemistry and the Chemical Industry in the 19th Century: The Henrys of Manchester and other Studies
Varioum ,1997

 →ヘンリー親子についての研究ではなく、14番目の論考「科学と1790年から1850年にかけてのドイツの大学システム」から読み始めました。これがなかなかよい記述です。特徴付けの仕方がユーモアがあってうまい。著者のファーラーさんは、現場のキミストを長くつづけたあと、化学史の研究者になった方です。Chemist-Historian としては最良のモデルのおひとりでしょう。

 図書館へ。いろいろ調べものをしながら、結局次の1点のみをコピー。

 Jonathan Simon,
"The Chemical Revolution and Pharmacy: a disciplinary perspective,"
Ambix, 45(1998): 1-13

 本としては、ベックの『鉄の歴史』のIIIの(2)。

2008.5.7  

坂口正男
「「舎密開宗」における化学親和力の観念」『科学史研究』通号 67(1963): 113-120

坂口正男
「「舎密開宗」の研究-2・3-」『科学史研究』通号 72(1964): 145-151, 151-156

坂口正男
「Adolphus Y peyのChemie voor Beginnende Liefhebbersと「舎密開宗」-」『科学史研究』通号 73(1965): 24-29

坂口正男
Chemie voor Beginnende Liefhebbersについて二・三のこと」『科学史研究』通号 78(1966): 49-53

坂口正男
「ふたたび「舎密開宗」の原本について」『科学史研究』通号 80(1966): 171-178

坂口正男
「「舎密開宗」における化学親和力の観念-2--」『科学史研究』通号 83(1967): 124-132

坂口正男
「「舎密開宗」の薬学関係引用書について」『科学史研究』通号 86(1968): 49-56

坂口正男
「明治前日本化学史」『科学史研究』通号 130(1979): 105-121

山根正次
「レオミュール「鉄鋼論」の金属学史的意義」『科学史研究』通号 67(1963): 106-112
 (→レオミュール「鉄鋼論」に関して、基本的な2次文献は、Cyril Stanley Smithの編になる、次の書であることがわかりました。
Reaumur's memoirs on steel and iron
a translation from the original (L'art de convertir le fer forge en acier, et l'art d'adoucir le fer fondu, ou de faire des ouvrages de fer fondu auffi finis que de fer) forgeprinted in 1722, by Anneliese Grunhaldt Sisco ; with an introduction and notes by Cyril Stanley Smith
Chicago : University of Chicago Press, 1956)

山根正次
「古典金属学の起源」『科学史研究』第1巻第3部(1962): 105-109

肱岡義人
Philosophical Transactionsに見る18世紀前半の化学と社会(1)&(2)」『科学史研究』通号 130(1979): 35-47, 74-79

John G. McEvoy,
"Modernism, Postmodernism, and the Historiography of Science," Historical Studies in the Physical and Biological Sciences, 37(2007) : 383-408

 私のカードで10冊借りることができるということです。『舎密開宗 研究』とOSIRIS Second Series, Vol.4: The CHemical Revolution: Essays in Reinterpretation(1988) の2冊を借り出しました。
 『舎密開宗 研究』は電車のなかで読み始めました。坂口正男氏の論考のみまずは目を通しました。なるほど。

 →私の関心は、坂口氏がどういうふうに資料を扱ったかということです。
 0.前提:1960年代から70年代にかけてなされた日本化学史の基礎的な仕事です。その価値は十分理解しています。また、今日簡単にできることから、過去において困難であったことを断罪するつもりはまったくありません。しかし、今日的観点から足りないと思われる点を指摘することには、(もしかしたら坂口氏のあとほとんど止まっているかもしれない)研究を進展させるために必要なことだと考え、敢えてあと智恵の批判をしてみます。

 1.海外の図書館・アーカイブに直接赴くことをしていない。
 (BLやBN等、西欧の大きな基幹的図書館に調査に赴いていれば、簡単に解明できたことがあります。)
 (坂口氏の活躍された時代に、子供時代を過ごした私には、その当時海外が如何に遠かったか、財政的にも心理的にも壁が高かったかは理解しています。でも、欧米に調査旅行に赴くことは可能であった。)

 2.ウィリアム・ヘンリーの化学教科書(最初は『化学概要』、すぐに『実験化学初歩』と改名)について、どういう仕方でどういう種類の資料を入手されたのか、明示されていない。
(研究は、人文系であれ、検証のために開かれているべきです。科学の場合には、追試が可能なように、実験手法を明らかにします。それと同じように、貴重な資料であれば、所在や入手経路を明示すべきだと考えます。そうすれば、別の研究者が内容を検証したり、別の観点から見直したりということができるようになります。もちろん、研究者集団のあいだに十分な共通理解が存在する場合には、その必要がないでしょう。)
 本文の記述から判断すると、入手されたのは、Epitome of Chemistry(1801) ならびにElements of Experimental Chemistry(6th ed., 1810) の2点のようです。『実験化学初歩』については、「筆者が見たのは1810年刻の第6版」(3頁下)と明示されています。(この書き方からすると、入手されたのわけではなく、どこかの図書館で閲覧した、あるいは誰か持っている人に見せてもらっただけかもしれません。)
 (さて、坂口氏の時代、コピー機は普及していなかったはずです。青焼きがやっとあったでしょうか。マイクロフィルムはあったと思われます。この辺は、年代がはっきりしないので、調査してみます。)

 (私が、書誌学の調査のために1980年代によく使ったアメリカの議会図書館のThe National Union Catalog は、本編が1968-80、補遺が1980-81出版です。ちなみに、大英図書館の『一般カタログ』は、1979-、フランス国立図書館の『一般カタログ』は1897-1981です。坂口氏の時代には、フランス国立図書館の『一般カタログ』だけが使えたことになります。もちろん、使われた形跡はありません。)

 →08.5.8 昨日取った論文のコピーを読みました。事情がもうすこし見えてきました。

 2”.ヘンリーの化学教科書
 N.67(1963), p.113 には次の記述があります。
 「筆者は幸にも、田中実先生の好意あるご教示によって『舎密開宗』訳述の原本となった Adolphus Ypey の Sijstematische Handboek der beschouwende en werkdadige Scheikunde 全巻に接することができた。」
 (9巻構成、1804-1812)
 この時点では、坂口氏は、『舎密開宗』の原本をイペイの『体系的ハンドブック』(1804-1812)の方だと考えていたことがわかります。(それまでの研究史がそういうふうに位置づけていたようです。特に田中実『日本科学技術史』朝日新聞社、1962, pp.134-140.)

 注1)(p.120)に次のようにあります。
 「訳述の原本は イギリスの W. Henry の Elements of Experimental Chemistry(1799) をJ.B. Tromsdorff がドイツ訳したものを、さらにオランダのAdolphus Ypey が蘭訳した Sijstematische Handboek der beschouwende en werkdadige Scheikunde (1804-1812)全9冊のものだ・・・」
 ヘンリの原本も、1799年刊の『実験化学初歩』を挙げています。
 これが研究の出発点における坂口氏の認識でした。

 No.72(1964), p.145,146 に次の記述があります。
 「『開宗』訳述の原本は現在Adolphus Ypey 著の Sijstematische Handboek der beschouwende en werkdadige Scheikunde (1804-12) ) Vols. (これをSHS と略記する)であるとされている。」
 「しかるにSHS の原本となったとみられる W. Henry(1775-1836) のElements of Experimental Chemistry (筆者のみたものは1810年刻の第6版である。それより前の版は本国において散逸して無いよしである。)(ECCと略記する)」
 そして、内的証拠から、「SHSは訳述の直接の原本とは別の本で、参考書として挙げている『依氏広義』ではないかと推論した。」

 同じく、No.72(1964), p.151に「『開宗』の究極の原本である W. Henry(1775-1836) のElements of Experimental Chemistry の第2版は本国においても散逸していて資料が入手できないが、資料が残っている第6版(1810刻)には」という記述があります。
 また最後に「おわりに Ypey の本についてご教示頂いた矢島祐利、田中実両教授ならびに漢文の読解に対してご指導を仰いだ本学岡田武彦教授、那須清助教授に深く感謝の意を表する。」とあります。

 イペイの書について進展があったのは、No.73(1965) です。最初に次のようにあります。P.24.
 「筆者は前報において『舎密開宗』訳述の直接の基本原書は 1803 年初版の Ypey による Chemie voor Beginnende Liefhebbers (CBL)であることを推定しておいた。ただ執筆当時国内においてこの本の所在を確認するに至らなかったので断定することができなかった。しかしオランダ本国にこの本が残存していることが分かったので、その内容を詳細に調べたところ筆者の推論に間違いのなかったことを確認することができた。」
 表紙の写真を貼付しています。
 さて、この坂口氏の記述からは、どういう形で入手されたのか、はっきりとしません。コピーでしょうか、マイクロでしょうか。

 あとがきには次のようにあります。
 「またこの機会に玉虫文一先生のご助言と筆者のささやかな研究のための文献の検索と複写に協力いただいた九州大学附属図書館の堺弘氏らおよび東京大学附属図書館の鈴木潤二郎らおよび国立国会図書館の皆様に感謝の意を表しておきたい。」

 No.80(1966), p.171 に次の記述があります。
 「この考えのもとに、Trommsdorff (以下、T. と略記)のドイツ語訳本の探索をはじめたのであった。西ドイツから東ドイツへと、その所在をつきとめるのに相当の時間を要したが、その甲斐あって筆者は、CBL のドイツ語原本のコピーを手にすることができた。その書名は Chemie Für Dilettanten(1803年初版、以下CFD と略記)というものであった。」
「そしてさらに、Henry の英語版の原著名は、EECではなくて、An Epitome of Chemistry(1801年初版、以下EOCと略記)という title であることがわかった。」
 この記述によって、やはりコピーで入手された可能性が最も高いことがわかります。

[追記]p.178 に次の言葉があります。
 「その構成といい、文章のスタイルといい、また対応のみごとさからいってEOCEEC は同じ本としか考えられないので、筆者の意見をそえた上で大英図書館の書誌部を煩わし、その間の事情の調査に協力を依頼していたのであったが、このほど筆者の推論に間違いのなかったことがわかった。すなわち、Dictionary of National Biography に、W. Henry のElements of Experimental Chemistry(EEC) ははじめAn Epitome of Chemistry(EOC)の title で1801年に出版され、あとで増補増訂されてEEC のtitle に変わったことが記されてある。・・・・
 また以上のことから、Ihde の『化学史』などに書いているEEC 初版の発行年1799年あるいは1796年というのは誤りであって、1801年でなければならない。ここで訂正しておきたい。」

86(1968), p.50 には次の言葉があります。
 「さきに本誌 No.67 の報告で付記しておいたように、筆者は当時佐賀県の武雄文庫で見た T. の Leerboek der Artsenymengkundige, Proefondervindelijke Scheikunde(LAPS, 第3版、1832)が、あらゆる点から見て、この『合薬舎密』原本(1815)と同じものであろうと推測した。。。」
 「幸いにもドイツ語原本の T. 著 Leerbuch der pharmaceutischen Experimentalchemie( LPE, 第2版、1803)を探し出すことができた。」

 →以上の記述を総合すると、坂口氏が「見た」と書かれた場合、図書館や文庫で閲覧したという意味のようです。そして、海外の図書館の蔵書に関しては、所蔵を手紙で問い合わせているようです。そして、可能であれば、コピーを入手している。(コピーを入手したと明示されているのは、Chemie Für Dilettanten(1803) のみですが、論述の様子からすると、ほかにもコピーで入手されたものはあるかもしれません。ともあれ、ウェブキャットの検索範囲に入っていない機関に所蔵されているものを利用(現地に行って閲覧)されたのも少なくないようです。

  [ヘンリーの化学教科書:文献]

 せっかくH氏に教えてもらって、pdf とテキストファイルがあることなので、何点か紹介しておきましょう。(ただし、テキストファイルの方は、明らかにOCR をかけてそのままアップしています。認識率はかなり高いので使い物にはなりますが、実際使うときには画像ファイルと対照ししつ使わなければなりません。)
(OCR を使われたことがない方は、pdf とテキストファイルを見比べてみて下さい。OCR をかけた場合、どういうテキストが生成されるかの生の事例を与えてくれます。)
 まずは、最後に掲げられている「化学の基礎的書物のリスト」。一般読者の便のために、少数の化学の基礎的書物のリストを掲げようとあります。12点。

1. Lavoisier's Elements of Chemistry, 8vo.

2. Lavoisier's Works, from the French, by Henry, 1 vol. 8vo. and a pamphlet.

3. Chaptal's Elements of Chemistry, 3 vols. 8vo.

4. Nicholson's First Principles of Chemistry, 8vo.

5. Nicholson's Chemical Dictionary, 2 vols. 4to.

6. Thomson's Translation of Fourcroy's Chemistry, 3 vols. 8vo.

7. Gren's Principles of Chemistry, 2 vols. 8vo.

8. La Grange's Manual of Chemistry, 2 vols. 8vo.

9. Pearson's Chemical Nomenclature, 2d edition, 4to.

10. Parkinson's Chemical Pocket Book.

11. Nicholson's Philosophical Journal, published monthly.

12. Philosophical Magazine, published monthly.

以上12点に付け加えて、最近フランスで出版されたフルクロワの大型本。これは今ニコルソンが翻訳している最中であり、タイトルは、『化学知識の体系』となろう。
 こう付言されています。

 →こういうふうになるのかというリストです。ヘンリーはなによりもカーワンを重視していますが、一般的にはこういう書物を参考書として推薦しているわけです。

 そして、もっと興味深いのは、その次の出版広告です。

William Henry,
A general View of the Nature and Objects of Chemistry, and of its Application to Arts, and Manufactures

Thomas Henry
An Account of a Method of preserving Water at Sea

Thomas Henry
Experiments and Observations on the following subjects
1. On the preparation, calcination, and medicinal use of Magnesia
2. On the solvent qualities of calcined Magnesia.
3. On the variety in the solvent powers of quick-lime, when used in different quantities.
4. On various absorbents as promoting or retarding putrefaction.
5. On the comparative antiseptic powers of vegetatable infusions prepared with lime, &c.
6. On the sweetening properties of fixed air.

M. Lavoisier
Essays Physical and Chemical
translated from the French, 8vo. 7s.

M. Lavoisier
Essays on the Effects, produced by various Processes, on Atmospheric Air, with a particular View to an Investigation of the Constitution of Acids
translated from the French, 8vo. 2s. 6d.

 ラヴォワジェの2点の英訳に関しては、次のNB(注記)がついています。「この2点の著作が与えてくれるのは、空気化学の進展に関する歴史的な見通しであり、また、驚くべき着想のもとなされたラヴォワジェ氏の精確な実験の十全な実に興味深い展開である。そうした実験が改革された化学体系の基礎を与える。」

Memoirs of Albert de Haller 12mo. 3s.

 そして、最後のページに「ウィリアム・ヘンリーの携帯化学箱」の宣伝があります。

DESCRIPTION AND PRICES OF THE PORTABLE CHEMICAL CHESTS,
INVENTED BY WILLIAM HENRY,
And sold by him at his Laboratory in Manchester,

No. 1. A large double mahogany chest, with folding doors, containing eighty-six strong square bottles, with ground and cut stoppers, filled with tests, &c. and so arranged that the labels may be seen at one view ; together with five drawers, in which are various articles of apparatus; accurate scales, decimal weights, improved blow-pipe and spoon, complete ....... 15 guineas.

No. 2. A chest of similar construction, but smaller; containing fifty-two bottles, with other articles, as in No. 1 . ..... 11 guineas.

No. 3. An upright chest, box shaped, intended chiefly as a travelling companion ; holding thirty-six bottles, with a drawer, containing articles and apparatus, as in the two foregoing ones .................6 guineas and a half.

N.B. Any one of the foregoing chests may be had either with or without the scales and blow-pipe. If sold without scales and weights, 16 shillings may be deducted from the foregoing prices ; and 14 for the blow-pipe and spoon.

The tests are all prepared with the most scrupulous attention to accuracy ; and supplies may be obtained, by purchasers of the chests, when the stock they contain is exhausted.

Letters, containing orders for the chests, which will be sent, carefully packed, to any part of Great-Britain, to be post paid, and a remittance of the value will be expected before the chest is delivered to the carrier.

 →これは、実に興味深い。

 実は今回坂口氏の研究を読んで、もっとも面白いと思ったのは、(目的外ではあるのですが)次の記述です。NO.80(1966), p.172.
 (トロムスドルフのCFD(1803)から引用して。)
 「さいごに、実験に必要な化学薬品を手に入れたい人は、私の店で、廉価に手に入れることができることを申し添えておきたい。また Chemische Probierkabinette (化学実験用の器具や薬品を備えた小箱)も私の店で買うことができる:値段は1部なら41/2 Friedrichsdor, 2部なら8 Friedrichsdorである。」
 坂口氏は解説して、「と商売上の宣伝もしていることはおもしろい。けだし彼の家は、祖父の代から続いた薬局であったことを思えば当然のことでもある。さらにそれについての参考書として彼の著書

Trommsdorff's Chemische Probierkabinette, oder Nachricht von dem Gebrauche und den Eigenschaften der Reagentien. Zweite Ausgabe. Erfurt, 1806  
 を紹介して、1807年2月の日付と署名で結んでいる。」

 さて、ヘンリーの推薦する12点の正確な書誌を記しておきましょう。

Chaptal, Jean Antoine Claude, Count de Chantelou
Elements of chemistry
3 vols., London, 1791

Nicholson, William The first principles of chemistry
London, 1790.

Nicholson, William.
A dictionary of chemistry, ... with a considerable number of tables, ... Illustrated with engravings.
London, 1795.

Fourcroy, Antoine-Francis de, comte
Elements of natural history, and of chemistry: being the second edition of the elementary lectures on those sciences, first published in 1782, ...
4 vols., London, 1788 / or

Fourcroy, Antoine-Francis de, comte
Elements of natural history and chemistry. By M. Fourcroy; ... Translated from the last Paris edition, 1789, being the third,
3 vols., London, 1790

Gren, Friedrich Albrecht Carl
Principles of modern chemistry, systematically arranged, by Dr. Frederic Charles Gren, ... Translated from the German; with notes and additions
2 vols., London, 1800

Bouillon-Lagrange, Edme Jean Baptiste, 1764-1844.
A manual of a course of chemistry : or, A series of experiments necessary to form a complete course of that science
Translation of Manuel d'un cours de chimie.
London, 1800

[Pearson, George 1751-1828].
Guyton de Morveau, Louis Bernard baron A translation of the Table of chemical nomenclature, proposed by de Guyton, Lavoisier, Bertholet, and de Fourcroy; with additions and alterations : to which are prefixed an explanation of the terms, and some observations on the new system of chemistry
London, 1794

Parkinson, James
The chemical pocket-book, or memoranda chemica; arranged in a compendium of chemistry, according to the latest discoveries, with Bergmanユs table ...
London, 1800

2008.5.10  

 6時前。あかんぼうはとっくに起きていました。ちびどもは6時過ぎ。雨。週末は雨の模様。

 昨日、駒場図書館でコピーをとったものです。

坂口正男
「W. Henry の Epitome of Chemistry のフランス語版についての覚え書き」 『科学史研究』No.95(1970): 139-150.

坂口正男
「『測山説』について」 『科学史研究』No.96(1970): 185-190.

矢島祐利
「物理的科学に関する渡来外来書―オランダ書の部―」 『科学史研究』No.1(1941): 111-114.

矢島祐利
「本邦における究理学の成立(II)」 『科学史研究』No.8(1944): 150-177

田中実
「化学」 『日本科学技術史』朝日新聞社、1962, pp.125-152.

 →上記の文献に目を通しました。坂口正男氏の研究の出発点が確認できました。

 矢島祐利氏は、両論文において、『舎密開宗』の直接の原本は、Adolphus Ypey, Sijstematische Handboek der beschouwende en werkdadige Scheikunde 9 vols., 1804-1812 としている。
 また、イペイの原著は、W. Henry, Elements of Experimental Chemistry 1803 としている。記述は、「といふ書らしいが筆者は未見である。」(p.170)

 田中実氏は、「『舎密開宗』の原著は「序例」によると、イギリス、マンチェスターの化学者ウィリアム・ヘンリー(W. Henry, 1774-1836) のElements of Experimental Chemistry (1799) である。この本は広く普及し30年間に十一版を重ねた。その再版をドイツのエルフト大学教授ですぐれた薬学者であったトロムスドルフ(J.B. Trommsdorff, 1770-1837) を独訳したものから「和蘭ノ医学教頭兼舎密教諭、亜独 布斯・依百乙」が重訳し、1808年アムステルダムから出版した蘭書が『開宗』の直接の原書である。」(p.135)としている。
 この田中実氏の記述が、坂口正男氏の研究の出発点だったと言えるでしょう。

 さて、坂口正男氏の「W. Henry の Epitome of Chemistry のフランス語版についての覚え書き」は、可能性を秘めた論文です。
 p.141 に「この論文のために、筆者はイタリア語版を除いた5カ国語のEOC翻訳版を参考にしたのである。」とあります。立派です。
 中心的に検討しているのは、Capitaine Bornot, Manuel abrégé de chimie... traduit de l'anglais de W. Henry, par Bornot,... Avec de nombreuses additions tirées des auteurs francais,Paris : Humbert, an XI-1803です。この書の紹介・分析が面白い。
 ざっと調べたところ、欧米の科学史研究ではこの書物を分析の対象にしたものは、まったくないようです。(まったくないと断言できるまでは調べていませんが、私が日常使っている検索エンジンではまったくひっかかりません。上の書誌も、BNのサイトでやっと見つけたものです。)
 18世紀から19世紀への世紀の転換点における各国の化学教科書の比較とその背景(national context)というふうな論文に発展させることができれば、大ヒット論文になることができるでしょう。

 「5カ国語のEOC翻訳版を参考にした」(5カ国語とは、ドイツ語、フランス語、オランダ語、デンマーク語、イタリア語の5言語)というのは、具体的にはどうされたのでしょうか? Manuel abrégé de chimieは入手されたようですが、その他のものはどうしたのでしょうか? 注にも一切どういう経路でどういう形のものを入手したのか書かれていないのは、かえすがえすも残念です。

  [ヘンリーの化学教科書:目次]
 手間はかかりましたが、ヘンリーの化学教科書の目次を table tag で作成しました。
William Henry, An Epitome of Chemistry(1801), Table of Contents
 (実際のものより、見やすくしています。同頁の意味の"ib" は具体的な数字に置き換えています。省略された文字を補足したバージョンも作った方がよいかなと思っています。)

  [ヘンリーの化学教科書:序文]
 序文もテキスト校正しました。

THE small volume, which I now offer to the public, is one of humble pretensions : yet its plan and objects appear to me sufficiently distinct, from those of every other compendium of chemistry to authorize the addition of one more to the extensive list of elementary works. The " Chemical Pocket Book" of Mr. Parkinson, and the " Description of a Portable Chest of Chemistry," translated from the German of Gottling, and published in the year 1791, might, perhaps, from the similarities of title and size, be supposed to have precluded the necessity of this publication. A very cursory comparison, however, of Mr. Parkinson's work, with this manual, will evince that the plan and objects of the two books are totally different. To the work of Mr. Gottling, the present bears, indeed, a nearer resemblance , but the coincidence is not such, as to supersede the utility of this epitome. The enumeration of tests for minefal waters ; the instructions for applying these reagents ; and the rules for detecting adulterations, are subjects common to both. But the progress of chemical knowledge, during the last ten years, has been so rapid, as to enable me to make numerous additions to the information of Mr. Gottling ; and to induce me materially to vary the arrangement, under which it was offered. It may be added, that the ancient nomenclature of chemistry, employed throughout Mr. Gottling's work, must render it nearly unintelligible to students of the reformed system.

The arranged series of experiments was suggested to me as proper for publication, by a written catalogue, which I drew up, more than two years ago, of the experiments performed during my course of chemical lectures. This I deem it necessary to state; because something similar is to be found in an excellent manual, lately published by Bouillon la Grange.

Another object, which I propose to be fulfilled by this epitome, is, that it may serve as a companion to the collections of chemical substances, which I have been induced, by the repeated applications of students of this science, to fit up for public sale*. The utility of these collections has, hitherto, been limited, by the want of a concise but comprehensive code of instructions for their use. With the concurrent aid of the first part of this work, and of a corresponding chest of chemical re-agents,

* See the advertisement at the end of the work,

the labours of the student cannot fail to be much facilitated: for one of the principal difficulties in studying the science of chemistry, experimentally, is the acquisition of a great variety of substances, many of which are not easy of attainment. The directions for analyzing waters, and mineral bodies in general, I shall enable any one to apply practically, by corresponding collections of chemical tests, of so small a bulk, as to add, in the least possible degree, to the incumbrances of the traveller.

In a work, professedly compiled from others, new and original information is not to be expected ; and it cannot be necessary to quote all the authorities for facts. If there be any one author, to whom I owe most, it is certainly to Mr. Kirwan, whose interesting and masterly Works comprehend almost every subject of chemical enquiry. The directions for analyzing minerals are translated, with considerable additions and alterations, from Vauquelin's paper, in the 30th volume of the Annales de Chimie.

I have now only to intreat the candid indulgence of the reader towards the errors and omissions which will doubtless be found in this work ; and in apology for which, I have to allege, that on undertaking the publication, I had a prospect of considerably more leisure, than fell to my lot in the prosecution of it. This apology, I am under the necessity of prefixing, also, to a second edition ; the rapid sale of the first having allowed me no time for material alterations, and having limited me to a few verbal corrections.

Manchester,
June 26, 1801.

 注目に値する多くの点はすでに坂口正男氏が分析しています。

2008.5.11  

 いつもより40分はやく家を出て、東工大図書館に寄りました。次の2点を見ました。(閲覧し、ノートを取った。)

坂口正男「Adolphus Ypey のこと」『化学と工業』19-1(1966): 79-81
 「彼がライデンで教えた広義の資料は、オランダ医学会の図書館に収められている。」(p.87)

 坂口正男「Johann Bartholmaus Trommsdorff(1770-1837)略伝」『化学と工業』35-4(1982): 262-263
 「祖父の始めた薬局の長男として、1770年5月8日 Erfurt に生まれた。12歳のときに Erfurt 大学医学教授であった父を失った。・・・14歳のときギムナジウムを退学して、Weimar 侯の宮廷薬剤官 Buchholz(, W.H.S.)の下で徒弟の修行を始めた、きびしい奉公の暇を盗んで宮廷薬局のおびただしい蔵書に挑戦し、重要な化学教科書からの抜書に励んだ。この徒弟時代に書いた最初の論文が Helmstedt 大学の Crell (,L.F.von) 教授の目にとまり、Crells Chemische Annalen(1787, Bd.1) に掲載された。・・・1789(19歳)帰郷し、薬局の経営を継いだ。」(p.262)
 「ドイツ語版が仲立ちになって、オランダ、フランス、イタリア、デンマークの各国語に移された。・・・筆者はこの稿を、彼の著作や J.G.W. Mensing のTrommsdorff伝(1839) などを参考にして記した。」(p.263.)
 2頁と3頁のものです。坂口氏のせいではありませんが、物足りないのは致し方なしか。


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