150号刊行に際して  150号刊行に際して

 当誌、化学史研究は、この号、すなわち2015年の第1号をもって通算第150号となりました。会長命により、150号記念の文章を書けというお達しがありましたので、編集長として、個人の研究者として考えていることを簡単に記しておきます。
 当学会は、1973年冬、化学史研究会として発足しています。翌1974年に『化学史研究』第1号を発行しました。以来、1974年と1975年には2号、1976年と1977年には1号を出版しています。1978年には2号、1979年、1980年、1981年には3号を出しています。そして、1982年から現在と同じく季刊となり1年に4号を発行しています。通算100号は2002年に迎えており、古川安現会長の「100号刊行に際して」という巻頭言の他、アメリカと代表的化学史家サックリーならびに英国の代表的化学史家モリスからのメッセージも掲載しています。
 季刊体制を守ることができれば、干支の一周で48号になりますから、12年プラス半年で50号が追加されます。
 年会でも会誌でも何度もご案内したように、2013年が創立40周年にあたり、理事会を中心に創立40周年行事を企画し、実行しています。まず、2013年7月に東京電機大学の新キャンパスで創立40周年記念シンポジウムを開催しました。この号が会員のみなさまのお手元に届く頃には、事務局長を7年にわたり務められた東工大の梶雅範氏を中心とする化学史国際ワークショップ「1920年代から1960年代における化学の変容」が3月上旬に無事開催されたと学会サイト上で報告することができていると思われます。
 創立40周年記念事業としてはもっとも時間がかかっている世界で最初の化学史事典の編纂ですが、最後の追い込み作業に入っています。年会に間に合うようにという掛け声のもと、最後の作業に入っています。遠からずご披露することができるのでないかと思っています。40周年記念事業のあとのことは、まだ理事会でも話題になっていませんが、日本社会全体と同じく人口減少(会員減少)と高齢化の進行の事実にも関わらず、もうしばらくは持ちこたえられるように思われます。
 個人的に私自身は、修士論文として「ボイルの自然哲学」(1983年1月提出)を書いて博士課程に進学したあと、ボイルであればどういうテーマでもよいので会に入って論文を書かれませんかと誘われて入会したように記憶しています。たしか、故藤井清久氏にそのように言われたのではないかと思っています。そして、1986年の第3号に「ロバート・ボイルの質の理論 ―一次性質・二次性質の区別の分析― 」という論文を掲載してもらいました。その後、いつとははっきりと覚えていませんが、理事会に誘われ、議事録作成の仕事を仰せつかりました。今名誉会員の鎌谷親善氏に議事録作成の仕方等いろいろ叱咤激励(叱責)されたことをよく覚えています。私が会に参加したときには、私はボイル研究者ではあっても化学史研究者とは言えなかったと思いますが、この学会で活動を続ける間に、半分ぐらいは化学史研究者になったと言えるかと思います。
 会の活動そのものに話を戻しましょう。会員数300人弱の学会で季刊を守っている学会を私はほかに知りません。この規模の学会だとほぼ1年に1号です。研究を計るとき、量的尺度も大切です。可能な限り、この季刊体制を守ることができればいいなと思っています。財政基盤等弱点はありますが、こうしたよい点を守り、ところによっては伸ばすことができれば、日本の知的世界に価値ある貢献がなすことができると考えています。

                              吉本秀之


ホームページにもどる