内容
科学と技術(Science and Art、あるいは科学と芸術)における表象の問題をサーベイします。広大な領域ですが、この問題領域を取り扱う基本的な観点/概念を修得してもらうことを目的とします。
1983年パリで「視覚化と認知」と題するワークショップが開かれた。美術史家、科学史家、認知科学者等多くの分野の研究者が出席したこの会議は、科学技術の分野における図版(地図、版画、写真、顕微鏡図、ダイヤグラム等々の画像表現)の産出・使用・普及に関する研究のターニング ポイントとなった。この会議からは、Human Studies の特集(1988)、『科学的実践における表象』(1990)、『科学的実践における表象:再訪』(2014)という論集が生まれた。
2001 年画家のホックニーは『隠れた知識』を出版して、15世紀以降画家は密かにカメラ・オブスクラを利用していたと主張し、ステッドマンは『フェルメールのカメラ』を出版して,フェルメールがカメラ・オブスクラを使っていた強い証拠を提示した。
2005年マックスプランク研究所の科学史グループは、この問題を 取り上げ、ケプラーの光学から始まり、視覚の理論が近代においてどのように形成されていったのかを追求した。
こうした研究伝統の研究成果を13回でフォローする。
授業計画 Schedule
第1回:イントロダクション
第2回:クレーリーテーゼの詳細と検討
第3回:ステッドマン『フェルメールのカメラ』の紹介と批判
第4回:ホックニー『秘密の知識』の紹介と批判
第5回:カメラ・オブスクラ:一個の装置の歴史?
第6回:ケプラーの光学理論とその後
第7回:マジック・ランタンとホイヘンス一家
第8回:ペルスペクティヴァ(光学/視覚論)
第9回:ペルスペクティヴァ(遠近法)
第10回:望遠鏡と顕微鏡
第11回:数学遊戯の系譜
第12回:19世紀の光学装置と写真術の出現
第13回:総括と総合的討論
授業の方法 Teaching Methods
分担して、担当するテキストを発表してもらいます。 その後、参加者全員で、コメント&ディスカッションします。 必要に応じて、講師がまとまった講義をすることもありえます。
成績評価方法 Method of Evaluation
発表(Presentation、50%)+期末レポート(Term Paper, 50%)
教科書 Required Textbook
ジョナサン・クレーリー『観察者の系譜 : 視覚空間の変容とモダニティ』以文社、2005
橋本毅彦『描かれた技術科学のかたち : サイエンス・イコノロジーの世界』東京大学出版会,2008
参考書 Reference Books
デイヴィッド・ホックニー 『秘密の知識 : 巨匠も用いた知られざる技術の解明』青幻舎、2010
フィリップ・ステッドマン『フェルメールのカメラ : 光と空間の謎を解く』新曜社、2010
履修上の注意 Notes on Taking the Course
関心のある方は、どういう専門分野の方でも歓迎します。 初回に分担を決めます。 自分の分担部分に関して、しっかりとテキストを読み、内容を整理し、他者にわかる発表をしてください。
初回:9月18日 打ち合わせ 自己紹介
2回目:9月25日
3回目:10月2日
4回目:10月9日
5回目:10月16日
6回目:10月23日
7回目:10月30日
8回目:11月6日
9回目:11月13日
10回目:11月20日(金)駒場祭により授業休止日
10回目:11月24日(火曜日)
11回目:11月27日
12回目:12月4日
13回目:12月11日
基礎文献(できれば全員に予習しておいてもらいたい文献です。)